大人になってから見た作品は数あれど、「好きになった」と言われて初めに思い浮かぶのは、ジブリ作品の『紅の豚』(1992年)。
社会人になった年か、その次の年に金曜ロードショーでやっていたのを見たのが初見。以来、1年~2年に1度周期で見たくなるタイミングが来るので、TV放送か、HDDの録画を残しているものを観る。
時折、円盤買うか悩む。
定期的に見るようになったきっかけ
大学生の頃、内容は拙いながらも、1920年代後半のイタリア社会について卒論を書いた。*1
で、『紅の豚』の舞台となる時代が、ドンピシャで1920年代後半のイタリア*2。
細かいところをツッコミ始めたら色々あるとは思うけど、全体的な空気感は史料などで読んできたものに近いように思う。
そういう訳で、足りない成分を摂取するつもりで定期的に見るようになった。
好きな場面など
- 序盤のマンマ・ユート団
- 軍事パレードの場面
- 航空機注文~ピッコロ社の工場から飛び立つまで
もちろんストーリーの後半も好きなんだけど、好きなシーンは話の前半〜3分の2まで行く頃には終わってしまう。*3
なお、3.以外は定期的に見るようになったきっかけとは一切関係なく、わたしの個人的な趣味。
1.序盤のマンマ・ユート団
わたし、ガタイの良い三枚目枠好きなんですよ!(唐突)
キャラクターとして三枚目に振り切ってるパターンも好きだし、時々真面目な場面が入るパターンも好きなんだけども。『鋼の錬金術師』のアームストロング少佐とか。
閑話休題。
序盤のマンマ・ユート団のシーンは、女の子を人質に取ったは良いけど(倫理的には良くない)、15人全員連れて来ちゃう理由が「仲間はずれにしちゃ可哀想だろ!」なのが良い。
いや可愛すぎんか。
この後も全体的に、マンマ・ユート団はじめ空賊の皆さんが割と可愛いキャラクターをしているというか、あたたかい笑みを浮かべながら見てしまうんだけど、やっぱり1番最初のシーンを挙げたい。
他にも、ポルコとカーチスのレース開始前、やたら「紳士」とか「正々堂々」とか言ってるのに、フィオと記念写真を撮る段に至って他の全員をぶっ飛ばしてツーショットで収まるマンマ・ユート団のリーダーとか。ママに弱い空賊の皆さんとか。
ストーリーの本筋にはこれっぽっちも関係ないんだけどな!!
2.軍事パレードの場面
「軍事パレード」が正しい表現なのかよく分からんけど、あのシーンの裏などで流れてるブラスメインのマーチが好きです。もはや場面ですらない。
中学生の頃に部活で吹いてた影響で、チューバとか低音楽器がよく聞こえる曲はテンション上がるんだけど、あのシーンで流れてる典型的なマーチの、やはり定石とも言えるチューバの頭打ちは良いですね!!!!!
チューバ吹きの端くれだった当時は、マーチの四分音符の頭打ちとか単調すぎて嫌いやったんやけどな……。*4
これは余談やけど、少し前まで『紅の豚』のサントラがサブスクで配信されてたのに、この1〜2ヶ月で配信しなくなってしまったのが残念。
3.航空機注文〜ピッコロ社の工場から飛び立つまで
『紅の豚』の舞台とされている時代の空気感を感じるためのシーンとして、わたしはこのシーンを推したい。
作中で、明確にイタリアの都市が示されるのはこの場面だけのはずだけど、ピッコロ社のあるミラノはもちろん、当時のイタリアって既に、ムッソリーニを首班とする所謂ファシスト党が政権を取っていて(1922年〜)、何ならムッソリーニによる独裁体制にもなっている(1925年〜)。*5
いわゆる秘密警察も活動してるし(フィオが乗ったトラックを尾行したりしたのは恐らくそういう組織の人たち)、民衆の態度や行動などへの影響は確実に出ている頃。
ピッコロ社の面々がポルコに協力するのに、当局に対しては「脅されたから」って建前を使いつつ、実際のところは楽しげに作業に勤しむ感じも「らしい」な、と感じる。
あと、ちゃんと食前に祈りを捧げる描写があるの良いな、と思う。古くから教皇領とかあるからか、生活に宗教がしっかり根付いてるというか。
そういう些細な描写も含めて、当時の空気感が感じられるこのシーンが好き。
推しポイントとは違うけど、ピッコロ社の作業のためにやって来るおばあちゃん可愛いよね。
ジブリ作品のサブキャラのおばあちゃん、皆さん可愛らしくて好き。
終わりに
大学時代に吸い尽くした(と思っていた)1920年代後半のイタリアの空気を感じようとするあまり定期的に見てしまう、好きな作品の話でした。
個人的に、「好き」と思う → 何度も見る → なんかよく分からんがさらに好きになる → 何度も見る ……のループが頻繁に起こりがち。
繰り返し摂取することによる執着的なものかもしれん。
*1:もともとイタリアに興味関心があったのもあるけど、特に当時、独裁体制下の独裁者と大衆、関連政策について関心がありまして……。今も関心はある。
*2:円盤パッケージに記載されてたあらすじでは「1920年代後半」になってた気がするけど、作中では「1929」(年)表記のある雑誌が出ているようなので、ピンポイントで1929年設定なのかも。
*3:余談だけど、他のジブリ作品でも、序盤の場面とか序盤にしかほぼ出ないキャラが1番好きになる傾向がある。『天空の城ラピュタ』の、親方とドーラの息子が対決するシーン(ド序盤)とか。『千と千尋の神隠し』ではオオトリ様とおしら様が好き(出番はほぼ序盤のみ)。
*4:他の低音楽器が軒並みメロディ or 裏メロ吹いてるのに、チューバだけ四分音符打ち込み、って曲がそれなりにあってなかなか恨めしかった思い出。
*5:何なら、ピッコロ社の工場から飛び立った後、道案内をしてくれたイタリア軍でのポルコの旧友が乗ってた飛行機にはファスケスがしっかり描かれていますね。